理事長所信

2011年12月27日 火曜日

【理事長】 田中 克典

 

 

 

 

 

はじめに

2011年3月11日14時46分18秒、三陸沖の500㎞に及ぶプレート境界を震源として、国内観測史上最大そして世界でも最大級のマグニチュード9.0という巨大地震が発生しました。この巨大地震による死者・行方不明者は2万人以上に上り、建築物の全壊・半壊は合わせて17万戸以上となるなど、東北・関東地方の太平洋沿岸部を中心に日本に甚大な被害をもたらした東日本大震災は、衝撃の事実として多くの人々の脳裏に今なお焼き付いていることと思います。この世界最大級の地震で多くの方々が被災され、また犠牲となってしまったその一方で、日本人のモラルの高さに世界中から称賛の声が上がっています。未曾有の大災害であるにも関わらず、冷静さを失わない日本人の秩序ある行動は、諸外国から尊敬の念に値することとして取り上げられ、他国では起こり得る略奪や暴動といった事件がほとんど明るみにならないことも大変な驚きとして世界から称賛を浴びました。この巨大地震を経験したことで、島国に住む我々は外からの声に触れ、日本人が古来より持つ他人を思いやる気持ちや礼儀正しさをあらためて実感し、日本人であるということを誇らしく思ったのは私だけではないはずです。しかしながら、昨今、日本人が自国の文化に誇りを持てず、日本人である事の良さに自信が持てていないという話をよく耳にします。英国の世論調査で日本が2006年から3年連続で「世界に良い影響を与えている国」第1位になったと紹介された一方、日本人の自国に対する評価は他の国と比べて肯定の割合が極めて低いという結果が出ています。これは、戦後の教育政策が大きく影響しており、その長い時間の中で誇りや国・地域に対するアイデンティティー(帰属意識)までもが忘れ去られてしまったように感じます。

また、別の観点に目を向け世界に誇れる日本の価値を考えてみると、その一つは1970年代から80年代にかけてのものづくりにありました。当時の日本企業は、業務の効率化において世界の模範であり、品質の向上とコストの削減を同時に実現していきました。諸外国が単に低コスト化に注目していた時に、日本企業が「品質を高めながらコストを下げる」という相反する命題に取り組み、高い次元で実現できたことが世界での競争力を開く鍵となり、日本のものづくり企業の大きな躍進につながりました。そして大躍進の舞台裏を支えたもう一つの世界に誇れる日本の価値。それは、日本人が古来より歴史を重ね培ってきた類稀な勤勉性や器用さであり、組織や仕事に忠実に向き合う強いアイデンティティーを形成していたことであると考えます。これらによって、1980年代から続く1990年代において、日本企業は特殊な技術を卓越させ、世界の中で圧倒的な競争力を手に入れたことは事実であります。

私は、この「ものづくり」を生業としていますが、自社で製造・販売している製品を考えた時に、一個人がそのもの自体を単体として使用する製品ではないことから、直接的に市民の笑顔や豊かな生活を連想し辛い職業柄であります。しかし、日常では目に付かない部分に組み込まれている精密部品でありながらも、多くの人々の生活に深くかかわっていることと同じ様に、このまちの発展や活力の基となり、さらにはこの国が再び元気を取り戻す原動力となっていきたいと考えます。

未曾有の大災害の発生や混乱を極める政治、低迷している経済など、この国難とも言える時代であるが故に、「国を支えて国を頼らず」という言葉のように、私達社団法人所沢青年会議所は、しっかりとこのまちの地に足をつけ、広い視野で物事を考え行動することが求められていると感じます。その為にもメンバーひとりひとりが組織に誇りを持ち、常に成長し続けることで、このまちに本当に必要とされる組織とならなくてはなりません。さらには、より公益性の高い運動・活動を通して市民が「ふるさと ところざわ」に誇りを持ち、まち全体がアイデンティティーを形成することで活気を生み出すべく、まちづくりに邁進していかなければならないと考えます。

 

まちへのアイデンティティーを育む

所沢市は人口34万人を数える県内でも有数の規模を誇る特例市です。都心に程近く非常に利便性が高いという地理的環境や、武蔵野台地の自然に恵まれた整った生活環境により、昭和30年代以降、多くの人々がこのまちに移り住みました。しかしながら、所沢市の年次別人口調査書からも見てとれるように、ここ近年の人口は、毎年わずかに増加する程度に留まり、ほぼ横ばいと言っても良い数値で推移しているのが現状です。加えて、2014年を境に人口が減少に転じ、全国でも有数の早さで生産年齢人口の減少と少子化・高齢化が進むまちとの推計も明らかになっております。既に、生産年齢人口と15歳未満の年少人口は、ここ数年間わずかながらとは言え減少し続けており、高齢者の人口は増加し続けている事実が年齢別人口調書からも明白になっています。私達は、この様な現実をしっかりと認識し、問題意識をしっかりと持ち、次代を担う子どもたちに活気溢れるまちを繋いでいけるように、問題解決に向け積極的に運動・活動を展開していかなければなりません。そしてその解決には、このまちに呼び込んだ人々が定住すること、特に年少人口である子どもを持つ親世代や働き盛りの若い世代を獲得し、生産年齢人口の増加を狙うことが必須条件であります。

こうした中、所沢市民の約3割となる10万人が平日には通勤・通学でこのまちを離れているというもう一つの現状があります。通勤・通学のために朝早く家を出て、夜に帰宅するという市民の数が非常に多く、まちに対して特に関心を持つことも無く日々を暮らしている人々が多いように感じられ、まち全体の一体感が形成できない要因の一つになっていると感じます。しかし、ところざわには、「住むには便利なまち」だけでなく、このまちに日本で初めての飛行場が開設され、日本の航空史の第一幕が開けたという輝かしい、他市には無い誇れる歴史を柱に、プロスポーツ球団があることや「となりのトトロ」のモデルにもなった自然、食文化など様々に誇れる魅力に溢れています。これらの魅力を再認識することで、このまちに住む人々がアイデンティティーを育むきっかけにもなると考えますが、実際には市民全体に浸透しているとは言い難く、さらには各地域間で認識の度合いに差が生じているように感じます。

現在に至るまでも(社)所沢青年会議所では、多くの先輩方が「航空発祥の地ところざわ」を柱とした様々な運動・活動を展開され、今も私達の中に脈々と受け継がれています。私達は、このまちの現状を見つめ、「航空発祥の地ところざわ」をはじめとする、様々な誇れる魅力を踏まえながら、市民全体がこのまちに住んでいるという誇りを持つことで、アイデンティティーを育み、活気溢れるまちとなる一体感を醸成する運動・活動を展開してまいります。

 

アイデンティティーを育むことの大切さ

私はこのまちで産まれ、地域の学校へ通って育ち、現在ではこのまちで会社を営み、そして次代を生きる三人の我が子を育てています。その中の長男が、2011年度の新入生として、私も6年間通った小学校に入学しました。私が通っていた当時は、一学年が5クラス編成と全校生徒も決して少なくはない生徒数でしたが、入学式当日に知った我が子の学年は2クラスにまで減っており、他の学年もほぼ同様であるとの現実を目の当たりにしました。そして、頭や言葉では理解していたはずの少子化をあらためて実感し、とても子どもたちが不憫な気さえしたのです。私が住む地域は、所沢市の中で最も西に位置していますが、所沢市の中心部にある小学校では、そこまではクラス数が少なくないと知り、同じ市内でも地域によっての差が激しい現実があることも実感しました。現代において、少子化は国家的問題でもあり、私達(社)所沢青年会議所が取り組める運動・活動としては、限界があるかもしれませんが、このまちの大人として、私達が私達にしかできない形で「市の宝」である子どもたちに関わっていくことが重要であると思います。そして、地域の隔たりを飛び越え同じまちに住む子どもどうし、一体感を持つことのできる交流を促進し、このまちを想う素直な心でアイデンティティーを育むことの大切さを伝えていかなければなりません。

また、ゆとり教育が見直され、新学習指導要領が導入されたことにより、小学校5・6年生では外国語活動が必修となります。英語でコミュニケーションを取ることができれば、確かに国際的な活躍が期待されますが、豊かな国際交流をするには、子どもたち自身が、土台となる地域の文化や自国の文化に対して誇りを持てていることが重要であると考えます。

そのためには、私達(社)所沢青年会議所メンバーが、地域の大人としてその存在感を示し、次代を担う子どもたちに、自分の存在の根源である地域の良さを名誉に思うこと、即ち「ふるさと ところざわ」に誇りを持ち、アイデンティティーを育むことの大切さを伝えていくことで、このまちで育ったことを胸を張って言える運動・活動を展開していかなくてはならないのです。

 

経営者として、Jayceeとして

リーマン・ショックを皮切りに100年に一度といわれる未曾有の経済危機に見舞われた影響が今も残り、先の見えない現状が続いている最中に未曾有の大災害が発生したことで、この国の経済にさらなる深刻な打撃が与えられたことは、会員の大半が中小零細企業の経営者層である私達Jayceeにとっても非常に厳しい現実となっております。しかし、私達は青年経済人としてこの厳しい現実から決して目を逸らさず、経営者としての誇りを持ってこの現状に毅然として向き合っていかなければいけません。どんな時代においても経営者は、自らの生活や家庭を守るのは当然ながら、自社で働いている従業員が、人としての生活ができて、幸せな家庭を築けることを常に誇りに思うべきです。そのためには、組織全体としての最大の利益を追求することを常に考えられる、利他の思考や考えを持つことが必要であると考えます。そして、大局的に物事を捉えられるように視野を広げ、目的や目標を設定し、それらを達成するための実施方法・内容を策定し、実行に移していく強い決断力が求められると考えます。そんな経営者としての資質を向上させていく上で、青年会議所の運動・活動は必要不可欠であり、それらを通じてメンバー個々が成長することこそがまちづくりという力につながっていくのだと考えます。まちづくりという力は、資質向上を目的とした研修や交流を通じた優れた個々の力の集まりであり、まちづくりには熱い行動力を持ったリーダーの存在が必要不可欠です。そして、それぞれのメンバーが経営者としても資質の向上を果たすことは、各々の会社が業績を上げ、このまちに優秀な企業が増えることを意味しています。そこには、雇用の創出や積極的な社会貢献が生まれ、このまちが経済的に活気づき、ひいてはこの国を活気づける原動力とも成り得るのです。

近年の会員拡大活動では、大きな成果が見られ、新しい仲間が増えています。青年会議所に入会する理由は人それぞれであると思いますが、(社)所沢青年会議所も地域の担い手を育成していく組織として、つよい指導力を発揮できる説得力のある指導者を育成することが社会から求められています。青年会議所運動・活動は、それ自体が貴重な研修の場でありますが、多様な個性を持つ多くのメンバー同士の交流からもお互いが磨かれます。法改正により、事業内容も尚一層の公益性を求められる中で、真のリーダーとして活躍できるような資質向上を図っていき、こんな時代だからこそ、今まで以上にJayceeとしての誇りを持ち、真に成長していくことに挑戦していかなければなりません。

 

組織への誇り、そして存続の為に

(社)所沢青年会議所では、ここ数年も特に力を注ぎ拡大活動に取り組んでまいりましたが、全国的に見ても会員の減少に歯止めのかからない状況が続いております。現在の青年会議所に対する社会的評価は、決して良いものばかりではありません。そのような噂や情報が先行し会員拡大につながらない状況があることも事実であります。更にメンバーの減少が続けば、組織自体の活気も衰退していき、また会費の減収により事業規模の縮小が余儀なくされます。400名を越える多くの先輩方が長きに渡り培ってこられた伝統をしっかりと受け継ぎ未来へとつないでいく為にも、本年も会員拡大により一層取り組んで参ります。

そして、本年は(社)所沢青年会議所の最重要課題として、公益社団法人格の取得に取り組んでまいります。2013年11月末日までに、私達(社)所沢青年会議所は、「公益社団法人」か「一般社団法人」のいずれかを選択しない限り自動的に解散をしなければならないことをうけ、臨時総会決議を踏まえ、この重要案件について議論を重ねてきました。検討の結果、「公益社団法人」を目指そうという結論に達し、理事会において「公益社団法人」取得に向けての正式なスタートを切るべくご審議を頂き、総会にてメンバーに報告を致しました。私達は、翌年の2013年に創立50周年を迎えます。組織として50年続くことは、決して並大抵の努力で済むことではありません。多くの先輩方が積み重ねてこられた努力、そして現役メンバーである私達が精一杯運動・活動に取り組み、受け継いでいくことによって今につながっています。この誇れる組織の存続のためにも公益社団法人格への申請手続きを速やかに完了させなくてはなりません。

最後に、青年会議所に対する大方の批判は、青年会議所運動・活動に対する批判ではなく、その運動・活動を推進している私達自身に対するものです。私達は、Jayceeとしての誇りを常に持ち、このまちに必要とされ、説得力のある組織であるために自分自身の行動をあらためて考えていかなければいけません。

私は理事長として、この厳しい時代の中での役割をもう一度真剣に考え、この「ところざわ」に住む人々が、まちに誇りを持つことでアイデンティティーを形成し、活気溢れるまちとなるよう、メンバー全員と共に一年間邁進して参ります。